COLUMN
  • ホーム
  • コラム
  • 減圧蒸留とは?仕組み・常圧蒸留との違い・向いている原料を解説
基礎知識 2026.08.21 FRI

減圧蒸留とは?仕組み・常圧蒸留との違い・向いている原料を解説

減圧蒸留とは?仕組み・常圧蒸留との違い・向いている原料を解説

【この記事でわかること】

  • 減圧蒸留の仕組みと、圧力を下げる理由
  • 常圧蒸留との違い
  • 減圧蒸留が向いている原料と、検討時の注意点
  • 精留塔と薄膜蒸留の違い
  • 受託蒸留を相談する前に整理したい情報

高温で加熱すると分解や重合、着色が起きる。沸点が高く、自社設備では蒸留しにくい。このような原料を分離・精製するときに検討される方法の一つが減圧蒸留です。

圧力を下げれば、常圧より低い温度で成分を蒸発させやすくなりますが、温度を下げるだけで求める品質を満たせるとは限りません。原料の組成や熱に対する性質、回収したい成分、求める純度に合わせて、圧力・温度・装置を検討する必要があります。

減圧蒸留とは?装置内の圧力を下げて行う蒸留

減圧蒸留とは、蒸留装置の内部を大気圧より低い状態にして、混合物を分離する方法です。英語では「vacuum distillation」と呼ばれます。

一般的な蒸留では、混合物を加熱し、蒸発した成分を冷却して再び液体として回収します。成分ごとに蒸発しやすさが異なることを利用し、目的の成分を取り出したり、不純物を減らしたりする操作です。減圧下でも、加熱・蒸発・冷却・回収という基本は変わりません。

参考:独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構「減圧蒸留:用語辞典」

https://journal.jogmec.go.jp/oilgas/termsearch/list/kikuke/reduced-distillation.html

圧力を下げると沸点が下がる仕組み

装置内の圧力を下げると、液体は常圧より低い温度で沸騰するため、沸点も下がります。

山の上では、地上より気圧が低く、水が100℃より低い温度で沸騰します。減圧蒸留も同じ圧力と沸点の関係を利用しています。真空ポンプなどで装置内の気体を排出し、目的の圧力に保ちながら原料を加熱します。蒸発した成分を冷却器で凝縮し、留出液として回収します。

減圧する目的は原料の加熱温度を下げること

高沸点の成分を常圧で蒸留するには高い温度が必要になり、その温度に達する前に分解や重合、着色が進むと、目的の成分をそのまま回収できません。

装置内の圧力を下げると、同じ成分をより低い温度で蒸発させやすくなります。減圧する主な目的は、原料の加熱温度を下げ、高温にさらされることで起こる変化を抑えながら分離することです。どの程度まで温度を下げられるかは、成分の性質と装置内の圧力によって変わります。

常圧蒸留と減圧蒸留の違い

常圧蒸留は大気圧に近い条件で行うのに対し、減圧蒸留では装置内の圧力を大気圧より低くします。両者の基本原理は同じですが、成分が沸騰する温度と、運転に必要な設備が異なります。

比較項目常圧蒸留減圧蒸留
装置内の圧力大気圧に近い大気圧より低い
沸騰する温度大気圧のもとでの沸点が基準大気圧のもとでの沸点より低くなる
向いている場面必要な温度で原料が安定している沸点の高い物質や、熱による変化が懸念される原料
主な付帯設備加熱器、蒸留塔、冷却器など加熱器・蒸留塔・冷却器に加えて、真空ポンプや圧力調整機構など
運転時の検討事項温度、還流比、留出の分け方など温度・還流比・留出条件に加えて、真空度、気密性、凝縮条件など

減圧すれば常に常圧蒸留より良い結果になるわけではありません。圧力を下げるための設備や運転管理が必要になり、沸点の低い成分まで蒸発しやすくなることもあります。原料の性質と求める品質を踏まえ、減圧蒸留が適しているかを事前に見極めることが重要です。

減圧蒸留が向いている原料とメリット

減圧蒸留の利点は、低い温度で蒸発させやすくなることです。この性質から、沸点の高い物質の分離や、熱による変化が懸念される原料の精製に利用されます。

沸点の高い物質を低温で蒸留しやすい

大気圧のもとで沸点が高い物質は、通常の条件では装置の対応温度を超えたり、沸騰する前に変質したりすることがありますが、装置内の圧力を下げれば、より低い温度で分離を検討できます。

ただし、減圧下での沸点は物質ごとに異なります。原料に複数の成分が含まれる場合は、各成分の蒸発しやすさと求める純度を見ながら、圧力と温度の条件を調整します。

熱による分解・重合・着色を抑えやすい

原料の加熱温度を下げることで、高温にさらされることによる分解、重合、着色を抑えやすくなります。そのため、反応性の高い化合物や熱に不安定な物質では、減圧蒸留が検討されます。

熱による変化を抑えるうえで重要なのは、加熱温度と加熱面での滞留時間です。中国精油の薄膜蒸留装置では、伝熱面での滞留時間を数秒~数分に抑え、バッチ式蒸留装置と比べて熱履歴を小さくしやすい特長があります。

中国精油で扱う原料・用途の例

中国精油では、薄膜蒸留による反応性の高い化合物の精製に対応しており、アクリレート、メタクリレート、イソシアネート、ビニル化合物、液状エポキシなどを対象としています。シリコーンオイル中の低分子環状シロキサン低減や、半導体向け材料の低メタル化にも取り組んでいます。

同じ減圧蒸留でも、原料の組成や熱安定性、回収したい成分、求める純度によって適する圧力・温度・装置は異なります。精留塔と薄膜蒸留の使い分けは後述します。

減圧蒸留のデメリットと注意点

減圧蒸留では、真空設備が必要になり、気密性や圧力、凝縮条件などの管理項目も増えます。圧力や温度が原料に合わなければ、目的成分を十分に分離できない場合があります。

真空ポンプと装置の気密性

装置内を減圧するには、真空ポンプと圧力を調整する機構が必要です。配管や接続部から空気が入り込むと圧力が安定せず、沸騰する温度や留出の状態も変わります。そのため、装置の気密性と運転中の圧力を管理します。

圧力・温度・凝縮条件の管理

圧力が変動すると沸騰温度や留出状態も変わるため、原料温度だけでなく真空度と凝縮条件の管理が必要です。低沸点成分を含む原料では、目的外の成分まで留出しやすくなるため、回収条件も調整します。

減圧蒸留が適しているかの事前確認

減圧蒸留が適しているかは、原料の組成や物性、熱安定性、回収したい成分、求める純度などを確認したうえで判断します。中国精油では、化合物の特性と求める仕様に応じて装置を使い分けています。

原料情報だけで判断できない場合は、原料サンプルを確認し、必要に応じてラボ試験を行います。相談時点で装置を指定する必要はなく、原料と求める品質から適する方法を検討します。

精留塔と薄膜蒸留の使い分け

減圧蒸留は、精留塔や薄膜蒸留装置など複数の装置で行われます。中国精油では、原料の性質と分離の目的に応じて精留塔と薄膜蒸留装置を使い分けています。

沸点が近い成分の分離に使う精留塔

精留塔では、塔内で気化と凝縮を繰り返し、蒸発しやすい成分と蒸発しにくい成分の濃度差を段階的に広げます。必要な成分と不純物の沸点が近く、単蒸留では分けにくい場合に検討する設備です。

中国精油の水島工場では、理論段数80段・50段・22段のバッチ式蒸留塔などを保有しています。真空度は設備により~266Paまたは~400Paで、高融点物に対応できる設備もあります。原料の組成や求める純度、処理量、加熱時の変化などを確認し、精留塔が適しているか判断します。

精留塔の仕様は設備紹介に掲載しています。

高真空・短時間で処理する薄膜蒸留装置

薄膜蒸留装置は、原料を加熱面に薄く広げ、真空下で短時間に蒸発させる装置です。加熱面に原料がとどまる時間を短くしやすいため、沸点の高い物質や、加熱による分解・重合・着色が懸念される原料に用います。

中国精油の水島工場では、真空度~20Pa、~5Pa、~0.01Paに対応する薄膜蒸留装置を保有しています。また、薄膜蒸留装置の伝熱面での滞留時間は数秒~数分と短く、熱履歴を抑えやすいのが特長です。精留塔と薄膜蒸留は、両者に優劣があるのではなく、沸点差や熱安定性、求める純度などによって使い分けます。

薄膜蒸留の原理や適用例は事業紹介をご覧ください。

減圧蒸留を相談する前に整理したい情報

中国精油では、詳細な打ち合わせと原料サンプルの確認後、必要に応じてラボ試験を行います。お問い合わせの際は、わかる範囲で次の情報をご共有ください。

原料の情報とサンプル

原料名、成分に関する情報、既知の物性をお知らせください。分析表やこれまでの試験データがある場合は、原料サンプルとあわせてご共有ください。

回収したい成分と求める品質

回収したい成分、減らしたい不純物、目標とする純度など、製品に求める仕様をお知らせください。当社は、化合物の特性と求める仕様を確認し、使用する装置を検討します。

試験に使える原料量と量産時の処理量

ラボ試験に使用できる原料の量と、量産時に想定する処理量をお知らせください。ラボ試験の結果をもとにスケールアップを検討し、実機製造に向けた条件を検討します。

減圧蒸留の受託は中国精油へご相談ください

中国精油の水島工場では、精密蒸留と薄膜蒸留の設備を使い、化学品の受託蒸留精製を行っています。沸点が近い成分を分けたい、沸点の高い物質を低い温度で蒸留したい、加熱による原料の変化を抑えたいといった課題をご相談いただけます。

ご相談内容に応じて原料サンプルを確認し、必要に応じてラボ試験からスケールアップ、実機製造に向けた条件検討まで進めます。

装置を指定していただく必要はありません。原料の組成や物性、これまでに試した条件を、わかる範囲でお知らせください。回収したい成分、減らしたい不純物、量産時に想定する処理量なども、お問い合わせフォームから承ります。

技術的なご相談はお気軽に

コラムで紹介した技術や事例について、
詳しく知りたい方は
お問い合わせフォームよりご連絡ください。